非常に面白かった(Fun&Interesting)のでざっくり感想を。
ネタバレはあります
既に大量のレビューがあるので、🦐主観での話をメインに書く。
■どんな映画?
・概要
ゴジラが現れ、東京都を蹂躙する。兵器が効かず、アメリカ(安保・国連)は核攻撃を決定。
その猶予時間のうちに、はみ出しモノ(と自分で言っていた)巨災対が冷凍凝固剤注入の作戦を進める…
・ジャンル/特徴
怪獣モノではあるものの、会議室や役人の描写が多く、"災害モノ"が近い。個々個人の感情はほぼ描かれていないものの、手続きや議題の流れが異常なほどしっかり描かれている。
個人の感情を見て熱くなりたい気持ちは終始あったが、手続きのよどみなさの快感は凄まじいものだった。
■前提
・🦐のゴジラ観
🦐は残念ながらゴジラや怪獣シリーズを見て居ない。なのであまり否定的な意見は書きたくないが、実写かつ怪獣もの、あるいは実写アクションに対してはある程度先入観がある。
ハリウッドの名作アクションは好きだが、VFXと実写の組み合わせに違和感を感じると楽しめなくなってしまう。
着ぐるみ感が良いとか、VFXレベルも十分という意見もあると思うし、素晴らしいものも当然あるが、少なくとも🦐の主観的な意見としては上記となる。
シンゴジラはその先入観を打ち砕いた最初の作品とも言えるクオリティに感じた。
補遺:
VFXレベルも高ければ良いという話ではなく、あくまで違和感があるかどうか。
時代劇の殺陣など、最近はかなり違和感を感じないレベルになってきている。
(昔はカメラのFPS値の問題もあったかも知れない)
■本編感想
・第一回上陸まで
事故か火山かといったり、若手が忠言するものの押しやられたり、まあいつもの立場わきまえ系。ただ、そこをねちねちやらず、ポンポンと展開が進んでいくので小気味よい。
非難や被害は災害のイメージとも言われているが、単純に怪獣による被害と言う意味で違和感の無い素晴らしい表現。
ここに限らないが、個々の状況・サブプロットまでしっかりやったら3倍くらいの長さが要るだろう。
・総辞職ビームまで
一旦戻るのにも、ちゃんとした理由を付けてるのは良い。"何故か帰った"→"最後まで理由分からず/感情があった←話の都合上"とかではない
(🦐が思うのは、15年前あたりから、こうした理論的に完璧性を持った作品が増えており、🦐としても好物になっている。
さらにそこの深さを湛えている必要があるため、そうそう名作がポンポン出ては来ないが…)
ビームは見に行ってやられるとかかと思ったら、普通に避難中なのも自然な流れ。
承認プロセスはまだるっこしいという意見が多いのはもっともだが、あまりに正確すぎて、現実を考えたらこんなもんか…とあまり否定的な感情は持たなかった。
むしろ個々の部署で一旦止めたりしがちな流れを、一気に首相まで持って行っており、現実よりよっぽどスムーズである。
・ヤシオリ(最後まで)
解析を劇的に進め、あらゆるツテを駆使して準備を進める。完全に分業が上手く行き、突入/注入の訓練も既に終わっていた。
攻撃が全弾必中してたり、やや都合が良いように思うときもある。
しかし、自衛隊の逸話(航空機の精度が異常に高い)などを考えると、意外と出来るのではないかと思った。
そういった、ギリギリのラインを常に進めており、違和感にまで発展してないのはすごいと思った。
最初バクダン列車が無かったのでアレ?と思ったら、1回目で失敗していて「おわぁ…」と唸ってしまった。
■個別感想
全体に入れると長ったらしいので、下記は個別に感想を書く・アメリカについて
都合の良い行動とはいえ、B-2とそのパイロットを失っており、狡猾前面という感じでもない。いずれは自分たちの身に降りかかると思えば、合理の流れとして核という考えにはなるだろう。
日系アメリカンは言い方とか気になるとこもあるが、スタンスは悪くないし、取引やしたたかさは丁度良い範囲に感じた。
逆にしたたかさが無かったら違和感は逆に強くなっただろう。
・上司について
なんか最後までどやりんこしてて微妙だったが、首相に好きにしろ(安保をのけて、ヤシオリを実行させろ)と言ったとこ一点だけ好感が持てた。・巨災対
全員変人と紹介してたが、作中一番知性的で合理性を感じ取れた(他もかなり合理性高かったが)。解析の進行速度が高すぎるきらいもあるが、メッセージという映画の解析速度も似たようなものだし、🦐はどっちも好き。
他の人のレビューにもあるとおり、個々人の細かな動きから感情を読み取るのが楽しく、のめり込むポイントとなっている。
シン・ゴジラはそういうのを「分かる」「読み取る」「楽しむ」ような人向けに作られている感触だった。
視聴者がそういう読み取り方をしないと通じないので、Goを出したのはそう読み取る人がそれだけ多くなったのだろうとも思った。
・友人
水を出す人。チャラくてゆるい感じだが、常に正解を見据えていて強い。
主人公も情熱が先走ったり理念おばけではあるので、この人の存在は作中一番重要だったと思う。
・主人公
一番重要…ではあるものの、最後らへんは結局理念オバケとなりかけており、絆()とか言い出す存在になるのかと思ったが、ギリギリ人間性(人が持っているはずの愚かさ)が残っていた。政界への窓口、違和感に気付く、リーダーシップ…など、多種多様な役割を一人でやっているので個人という感情は描かれていない感じがした。
次期首相になるかなとは思ったが、平和な時代に合うかどうかは懸念が残る
(ただ、作中で今後安全な日本はしばらくなさそうなのでぴったりではある)
■総評
・Pros/Cons
良い点:○メインプロットをいたずらに止める要素がほぼ存在しない
共有知が進んだ今では話のために行動しているのか、意志のままに行動しているのかが丸見えになっている。
話のため無理矢理邪魔をしている/されている状態はメタ的な不快感を催す。
本作にはそういうものが存在しない。
○技術的な違和感がまったく無い
現実の政府や機関に深い理解を示しており、科学的な流れもほとんど違和感を感じない。
第三幕のカタルシスへ向けて解決策を、となるとトンデモ展開になりがちだが、本作はかなり現実的に見えた
(その点については、やはりあれこれ考察されている。 ただし、現実で間違いであっても、作中違和感が無いことの方が重要。 現実に存在しないものに、現実を勝手に適用するのは間違いだと思う。 ゴジラは常識で考えられる動物とは違うかも知れない)
トンデモ展開やトンデモDeusExMachinaも、使い方次第で面白くなるモノだが、共有知で解析される現代、それを現実寄りで表現するのは難易度が高く、違和感がないのは真に名作の要素の一つだと思っている。
重要なのは整合性なので、別に昔の技術や拙い技術でも変わらない。
現実に存在する最新理論ほど、難しいという話。
微妙な点:
△サブプロットがほぼない
主要なメンバーはある程度表情の変化などで見せているが、各末端(自衛隊、工場、警察、一般市民など)の感情や感想はほぼ出てこない。
(ここはこう言うだろう!)と思う箇所はかなりあり、それによりぐっとくるであろう場面は多々あったのが🦐の感想。
ただし、先に述べた通り入れれば数倍の長さになり、言いたい事もぶれてくるであろう。
それらを一切排除したことで、この作品はより見たいと思える作品になったとも言える。
△幕引きが不安だらけ
終わったけど凍っただけみたいな状態で、非常に危なっかしい。
次回作で実はこうだったので生き返りました!と言ってもいいのに、それ以前に既にヤバイ。
災害も忘れたコロにやってくるということを可視化したとも言えて上手いのだが、不安が大きすぎる。
というか、ここまで不安だと問題が未解決に思えてしまう。
災害は過ぎ去っても復興が残っているとか、不安は残っているという意味合いとも言えるが、何か現実的なモンヤリ感が残ってしまった。
レビューでよく見るが、自分は気にならなかったポイント
-日系アメリカ人
合わないという意見もあるが、なぜ日本に残って協力したのかの理由としては整合性が高い。
-早口、字幕
演出として特に違和感はなかった。
読まなくても良く、感じを掴んで欲しいだけだと受け取った。
早口は意外と分かりやすく、(対人ではイマイチ聞き取れない🦐も)初回で全て聞き分けられた。
ただし音量が全体的に低く、ボリュームはかなり上げて視聴した。
-科学的にどうこう
吐き出すのではないかとか、血管に吸収されないのではないかとかもあったが、そもそもゴジラの体内が通常の動物と一緒か分からない。
勝手に現実の既存を当てはめて考えるのがおかしい
・全体の感想
視聴中、視聴後いずれも理論面での爽快感を感じた。現実ではそこかしこで躊躇が発生し、手遅れになる可能性もあるだろうが、本作は頑張れば行けそうかも?という希望をもたらしていると感じた。
特に終盤伸るか反るかの場面、"好きにしろ"というのがここで活きてきており、綺麗事や保身などを捨て、皆正直になっているのが好感。
(海外も、日本がやられて、核が効かなかったら次は自分たちだし)
最近ケムリクサで「自分の好きを見つけ、好きのために生きる」という話を見たばかりだし、少しだけ重なったのを感じた。
他でも言われている通り、個々人の感情や葛藤、そうしたサブプロットは不足を感じた。
とはいえ、そういうのは想像やインタビュー、妄想等で補っていくのもアリだろうと思った。
避難者の感情や、消防隊、自衛隊のふんばり、巨災対の個々人の感情は細かいながらも見て取れて、存分に想像出来た。
・まとめ
官僚や政府、自衛隊や公務員、各産業や地場の人達も、頑張ればゴジラくらいなんとかできる!といった理論的な爽快感を得たいときは是非見るべき映画として推したい。保身を捨て、依存や放棄もせず、問題解決に向けて一丸になるとはこういうことだろう。
(現実がどうであれ)
政府や官僚の仕組み、自衛隊の命令系統などは多分に現実に即しているが、不要ないざこざや口論、邪魔立てなどは一切なく、非現実でもある。
このことから、「必要な現実は明確に示し、不要な現実は徹底的に廃した」作品でもあり、言ってみれば「ゲームのようにくみ上げられた作品」ではないだろうか。
ゲームには現実性や没頭感は重要だが、現実のような制約は非常に不快になる。
この作品はそうした現実に(ほぼ必ず)発生する厄介な事柄を極限までそぎ落としたと言う意味で、非常に上手い判断の連続で作られた作品に映った。
それによる好みが分かれるのは当然だが、まさに"今""私が見たいと感じる"ゴジラとして、この上ない作品である、という点を持って、🦐の感想を締める。
補遺:
※レビューをみると低評価も多い。
恐らく現実性や技術、生命体の仕組みなど、映画として現実として見た場合に気になる部分は多々あるのだろう。
分かりやすく、丁寧に描いているだけに余計に。
ただし、全体を一つの災害シミュレーションゲームとしてみると一気に見え方が変わる。
そういう見方をするかどうかも評価を分けるポイントかも知れない。
(そういう意味では、怪獣モノやハリウッド映画という感じで見てしまうと、不満が出るのもまあワカル)
おしまい